SpectralのUltraliner Cablesは、SpectralとMITが共同で開発した、Spectralのアンプの専用線です。必須というわけではないと考えておりますが、筆者はSpectralのアンプを使用する際には、原則としてラインケーブル/SPケーブルには、SpectralのUltralinerシリーズまたはMITのOracleシリーズを用いています。理由は、単純に音の面で相性が抜群に良いからです。
繰り返しになりますが、Spectralのアンプを使うにあたりSpectralのUltralinerないしMITは必須ではない、というのが筆者の見解です。公式には、Spectralのアンプはメガヘルツ帯域まで再生するため、ローパスフィルターとして機能するケーブルを用いない場合、発振する可能性があるとされていますが、実運用上、さまざまなユーザーさんがさまざまなケーブルを試されているなかで、問題が生じたという話は聞いたことがないです(単に筆者が視野狭窄な可能性も無きにしも非ず)。
MITが製造している多くのケーブルと同様、箱付きです。外観は、たとえば筆者の所有するUltralinear IIであれば、ベースとなっているMITのMI-350ないしMH-770と同様の形状ですが、色みは異なっていて、Spectral特有のシックさは感じます。(ただしUltralinearでも明るめの色みのものもある。)
取り回しについてですが、やはり「箱がついているが、どうなのか?」と思われる方が多いのではないでしょうか。結論から言えば、Spectral Ultralinearケーブルの箱は、MITのOracleシリーズなどとは異なり、軽いため、浮かせて使用することができます。よって、取り回しにおいて問題となるケースは稀です。特にインターコネクトの箱は非常に軽量で、取り回しにおいては、基本的には問題にならないです。スピーカーケーブルについては、多くのスピーカーの場合は地面に這わせる運用になると思うので、これまた問題にはならないと思っていますが、ターミナルが高所にあるスピーカーに接続する場合のみ、注意が必要です。なお、筆者が知る範囲ですと、スタンドを買うなどして対応するケースが多いようです。
Spectral Ultralinearケーブルに限って言えば、単品での音の良し悪しについて論じる意義を感じていません。UltralinearはSpectralのシステムで使用することを前提に、その一部として位置付けられるものですので、語るとすれば、Spectralのシステムそのものを語るべきだと思っています。なお、それについてはSpectral簡易レビュー等で行っていますので、ここでは割愛いたします。
原文:Introducing the New Generation Spectral/MIT Cables
1980年代初頭、Spectral Audioとミュージック・インターフェース・テクノロジーズ(MIT)の共同開発により、Spectralのハイスピードオーディオ機器用として初の、タイムアライメントのとれたオーディオケーブルが誕生しました。Spectral MI-500 インターコネクトケーブルと MH-750 スピーカーケーブルは、Spectralの電子機器の性能の限界を引き出し、瞬く間にリファレンスとなりました。
Spectral/MITの共同開発は、オーディオ分野において能動部品と受動ケーブルネットワークを完全に統合した初の超リニアなシステムを体現しました。信号ケーブル内の微細なノイズや位相歪みを観測する測定技術をMITと共同開発したことで、Spectralは時間領域において真に正確な電子機器と最適化ケーブルの統合システムを実現したのです。この種のチューニングシステムは無線やマイクロ波設計では日常的でありましたが、Spectral/MITの取り組みは、この重要なシステム概念をハイエンドオーディオに導入する先駆けとなりました。
初代MIT/Spectralケーブルの登場以来、開発の段階を重ねるごとに、コンポーネント間およびコンポーネントとスピーカー間のインターフェースはさらに最適化されました。MI-500やMH-750ショットガン、CVT、そして最終的にターミネーターといった画期的なケーブルネットワークは、Spectralのオーディオコンポーネントを中心に設計され、MITを世界的に最高峰のハイエンドケーブル専門メーカーとして認知させるに至りました。これらのケーブルとSpectralのUltralinear(ウルトラリニア)高速回路の組み合わせは、MITの技術の最も妥協のない実装例です。
Spectralのオーディオコンポーネント向けに開発された直流結合型の高速増幅回路は、優れた過渡応答精度から時間依存歪みや位相ノイズの低減に至るまで、従来のオーディオ増幅設計に対し数多くの実用的な利点を提供します。SpectralのコンポーネントにおいてこのUltralinear回路の能力は、独自の音響空間で発生する音楽的イベントの解像度を高めるためのリニアリティの向上へと変換されます。
妥協のないオーディオ回路は極めて広帯域でなければなりませんが、広帯域出力は送信機のように放射し、オーディオ信号を鳴らし歪ませるメガヘルツ級発振を発生させます。Spectralのシステムにおける発振を防止するため、従来の「ワイヤー」ケーブルはMITが開発した精密調整済みケーブル「ネットワーク」に置き換えられました。MITケーブルのモジュラー端子部は、理想的なローパスフィルターとして機能するよう調整されており、Spectralの高速・高解像度回路に完璧に適合します。超高周波数ロールオフの調整により、両方の長所を両立させています——オーディオ回路における極めて高速な立ち上がり時間と安定化時間による卓越した信号分解能、そして絶対的なアンプ安定性とRFI遮断を実現する精密な帯域幅調整です。MITケーブルのネットワークとSpectralのワイドレンジなコンポーネントの統合は、従来の帯域幅制限のあるオーディオコンポーネントとワイヤケーブルの組み合わせを、ほぼ全ての領域で容易に凌駕します。
MITの10年にわたるネットワーク技術の開発経験を経て、ブルース・ブリソンがSpectralのシステム向けに新世代ケーブルを設計しました。そのSpectral Ultraliearケーブルは、最適化されたインターコネクト/スピーカーケーブルのペアによりシステム構築を簡素化し、基礎レベルからリファレンスレベルまでの応用をサポートします。UltralinearケーブルはSpectralの伝統に則った優れたコストパフォーマンスを実現し、はるかに高価なネットワークと同等の性能を提供します。
(略)
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Spectral MI-350 Ultralinear インターコネクトケーブルは、Spectralシステムにおける当社のリファレンスとなるコンポーネントインターフェースです。MI-350 Ultralinearは、Spectralのコンポーネントとのリファレンスレベル性能を実現するよう設計され、当社専用アプリケーション向けに最適化された新世代350シリーズMIT設計を導入しています。新世代のSpectral MI350 Ultralinearは、MI-500シリーズの最先端の伝統を継承しつつ、総合性能とコストパフォーマンスにおいて顕著な進化を遂げています。MITリファレンスケーブルで先駆けた全ての特許取得設計技術は、Spectralシステム向けにMI-350 Ultralinearで最適化され、新たな次元の静粛性と透明性を実現しています。MI-350 Ultralinearは、Spectral MI-770 UltralinearスピーカーケーブルおよびSpectralのオーディオコンポーネントとの理想的なペアリングを実現します。
Spectral MH-770 Ultralinear スピーカーケーブルは、Spectralシステムにおけるリファレンス級のスピーカーインターフェースです。MH-770 Ultralinearは、世界的に認められたMH-750 CVT/ターミネーターへと至る、Spectral MH-750シリーズの10年にわたる進歩に触発されています。MITの特許取得済み設計技術の全てが、MH-770 Ultralinearにおいてスペクトラルシステム向けに最適化され、新たな次元の正確性とリアリズムを実現しました。音響性能とコストパフォーマンスにおいて確かな進化を遂げており、Spectralのあらゆるシステムを補完します。