こちらのページでSpectral(のアンプ)と言った場合、原則的にはDMA-400RS & DMC-30SS Series 2を指します。モデル名を都度、記述するのは冗長なので、予め明示的にしておきました。
DMA-400RSがパワーアンプで、DMC-30SS Series 2がプリアンプです。
DMA-400RSは、拙宅のオーディオの「エンジン」です。タガの外れたスピード&リズムでスピーカーを駆動します。感覚的には、音圧で吹っ飛ばされたとと錯覚するような瞬発力と、次の瞬間には定位置に引き戻されているような鋭い立ち下がりを兼ね備えます。現状、駆動力について一切の不満が出ていないのは、このアンプのおかげです。
DMC-30SS Series 2は、拙宅のオーディオの「頭脳」です。生命感が溢れ、しかし音場は広大で見晴らしが良いという、Spectralならではの音を実現する存在です。このSpectralの音(≒キース・ジョンソン博士の追求する音)は、自分が所有した範囲では、DMC-20およびDMA-180からの伝統であり、俯瞰すれば、Reference Recordingsの音源などからも感じます。
Spectralの伝統に漏れず、ハイスピード、ワイドレンジ(f特)を特徴とします。
何よりもまず、全帯域にわたって、音の立ち上がりと立ち下がりが異様に速いです。うまく言語化するのが難しいですが、聴感上、音がもたつく感覚がまるで無い、というのが一番わかりやすいように思っています。経験上、これは「知らなければそれはそれで支障はないが、慣れると病みつきになる感覚」とでも言うべきもので、車に喩えることができると思っています。具体的には、加速性能やブレーキの性能が良い車に慣れてしまうと、そうでない車に乗った時のストレスが大きい、とでも言うべきものです。なお、スピードは音の立ち上がりの方において、より顕著です。音の立ち下がりについては、Soulutionの7シリーズなど、Spectralに比肩するアンプも若干はあると思われます。
加えて、立ち上がりが速いことと同じくらい重要なことは、全帯域にわたって音のスピード&リズムが揃っているということです。後述のf特の話と重なりますが、Spectralのアンプは、特定のレンジの範囲内でフラットであることを重視して設計・開発されているように感じます。凸凹があれば、いずれかの音が遅れて立ち上がるor立ち下がるように感じられると思いますが、そういう不揃いを徹底して排除しようとする強い意志を感じます。
なお、ハイスピードについてはSpectralの全てのアンプに当てはまるポリシーですが、DMA-400RSを導入したことで、より一層顕著になったのは、低音の立ち上がりの速さと、量感・質感との両立でした。量感を絞るなり質を落とすなりすれば、より容易に速さを演出することもできそうですが、そういうところを妥協せずに黙々と性能改善を続けている点は、Spectralの美徳だと感じます。
まず、可聴周波数帯域(20Hz~20kHz)の全域に渡って、音が非常にクリアーです。ワイドレンジというだけではなく、極めてフラットな出音だと感じます。
筆者の所有するMagico Q5をドライブした所感ですが、まず驚いたのは低音の中でも低い音の明瞭さでした。100Hz以下のレンジでも、下まで綺麗に出ていて、かつ、特定の帯域が膨らんだり凹んだりということが少ないため、余計なことを意識することなく、音楽がスッと入ってきます。前提、音色等のキャラクターは全く異なりますが、この低音の感覚は、GOLDMUNDやCH Precisionの中でもかなり高い機種で音を聴いた時の感覚に似ています。これは、仮に高額なアンプでも、そういうポリシーで設計していないと、出ない音だとも感じます。
このファクターは個人的に、Spectralの出音の最大のキャラクターだと感じています。ピンとこない方は、FM Acousticsのアンプからの出音を思い出していただければ、なんとなくご想像いただけるのではないかと思います(※)。また(性能は前提としても)これは筆者がSpectralのアンプを導入を決断した最大の要因でもあります。
長々と話すことで伝わるものでもない気はしますが、世の中のハイエンドなアンプの中には「高性能だが、音の生っぽさやリアリティよりもディティールの描画を優先した結果、無味ないし無機質な出音になってしまっている」ように感じられるものもあり、個人的には、そういうアンプがあまり肌に合わなかったという経験を結構してきたので、Spectralとの出会いは非常に貴重でした。
※補足ですが、FM Acousticsのアンプほど強烈な色彩感や艶感はなく、もっとシックです。FMは、一聴してリスナーを虜にすることが多いようですが、Spectralはむしろ、聴き込んでいくうちに出音の生っぽさやリアリティに惹き込まれ、その他の選択肢が視界から消えてゆく、という感じでした。
Spectralのアンプは出音のサウンドステージが広大です。これは、音の熱気や生命感を前面に出したアンプとしては珍しいと推察します。たとえば、暖色系の出音のアンプの筆頭であるFM Acousticsや(毛色は異なるが)KRELLやDan D'Agostinoなどは、迫真の音像表現を魅力とします。これは、音像の存在感を際立たせる方向に音を振るアプローチだと思っていて、とりわけヴォーカルの色気やリアリティを表現するにあたっては無類の強さを発揮しますが、全音に等しくフォーカスし、サウンドステージを俯瞰するようなアプローチかというと、否だと思っています。
Spectralがやっていることはその逆で、性質上、フルオーケストラ、ビッグバンドジャズ、音数の多いロックやPopsの再現においては、卓越した実力を見せつけます。ポイントは、前述したハイスピードが相まって、声も楽器も含めた全音の統率力が素晴らしいことだと思われます。ただ俯瞰的になるだけでは、ともすると出音の迫力や躍動感は失われますが、そうはならず、ステージが一体となって音を振りまく様相は、FM Acousticsなどとはまた別の観点で、大いに迫力があります。
筆者が知る限りですと、Spectralのアンプ全般が、現代的な高性能スピーカーとの相性が良いです。なお、この場合の「Spectralのアンプ」とは、DMA-400RS & DMC-30SS Series 2以外の過去所有機も含みます。
スピード&リズムの的確さをはじめとする、性能的な意味でのポテンシャルを引き出しながら、広大な空間表現と、熱気・生気・生命感にあふれた音像表現を実現する、と感じます。
具体的に、当方が所有して試したのは、Magico Q5、Avalon Diamond、Wilson Audio MAXX 3およびSophia Series 1、B&W 800 Diamond、PIEGA C8。
Avalon DiamondとSpectralの相性の良さは特筆すべきものがありました。言語化するのに苦労するレベルなのですが、とりわけ中〜高音の生っぽさ・リアリティは、今なお比肩するシステムを探せば苦労すると推察します。なお、ISISとDMA-400RSの組み合わせで聴いたこともありますが、こちらは低音の質・量も含めて懸絶していました。
Magico Q5とSpectralとは、音が同傾向であるため、Spectralのアンプは純粋にMagico Q5を強化する存在だと思われました。Spectralのアンプが、ネガを潰すのではなく、ポジを伸ばす方向に働く点は、Magico Q5の完成度の高さを表していると感じます。
B&W 800 Diamond、Wilson Audio MAXX3、Sophia Series 1については、これらのスピーカーで問題になりがちな高音の尖りや鋭さを見事に回避し、滑らかかつ有機的な高音表現を実現した点は、特筆に値します。いずれも極めて精緻で繊細な高音を出すスピーカーですが、アンプによってはキンキンして聴けたものではない音が出るので、そのネガを克服しつつ性能面でも底上げするSpectralの効能は評価できると感じました。
PIEGA C8については、高音の尖りや鋭さが問題になることはありませんでしたが、スピーカーの出音がクールで無機質になりがちなきらいがあったので、出音に熱気や生気を付与するSpectralの効能は、やはり良い方向で働いたように感じました。
余談ですが、YG AcousticsとSpectralの組み合わせについては、DMA-400RSのメンテ時に店頭試聴しました。所感としては概ね、Magico Q5と同じことが言えると感じました。
まず、SpectralとReference Recordingsの関係より、クラシックとジャズの再現能力は抜群です。これについてはこれ以上ぐだぐだと書く意義を感じていません。
個人的に心踊らされたのは、アニソンを含むPopsとの相性の良さです。ヴォーカルの熱気・生気・生命感と、抜群のスピード&リズムによるものだと推察しています。特に、録音の悪いアニソンを聴くと感動します。「この曲をこんな表現で聴けると思わなかった」という感動が大きいです。
原文:Development Overview - The Spectral DMA-400 Monaural Reference Amplifier
Keith O. Johnson, Director of Engineering
スペクトラルのオーディオコンポーネントは、数十年にわたり進化を続けてきました。その背景には、レコーディングセッションでの生演奏の試聴や、様々なリファレンスサウンドシステムを用いた入念なリスニングテストを含む、継続的な研究プログラムがあります。この取り組みから得られた知見は、有望な技術コンセプトや新回路、試験手法の創出・評価に不可欠な要素となっています。生演奏の臨場感を最大限に再現する可能性を秘めた最良の候補技術は、スペクトラルの先端オーディオ製品開発に採用される技術基盤となります。こうした背景研究により、新開発製造プロセスで製造された半導体素子の利点が実証され、卓越した性能を発揮するハイブリッド表面実装・スルーホール増幅回路への採用が実現しました。人間の聴覚に即した音楽的波形を用いた当社実験室テストは、その技術的優位性を実証しています。圧倒的なダイナミクスと透明感、卓越したディテールとステージングを正確に伝達する最も有望な回路群は、スペクトラルの設計思想に組み込まれ、新製品スペクトラル DMA-400 リファレンスという極めて精緻なモノラルアンプの誕生につながりました。
新世代のSMTトランジスタを含む、Spectralの高速アナログ応用において優れた性能を発揮するプレミアムデバイス向けに、先進的な増幅トポロジーを開発する中で、我々は常に利用可能な半導体トランジスタを研究しています。新設計に活用可能なこれらの表面実装半導体の多くは応答速度が速く優れた増幅ポテンシャルを有していますが、精巧に設計されたSpectralの回路に組み込んでも期待通りの性能を発揮しませんでした。多くの場合、解像度と明瞭度が損なわれることが判明しました。電子技術の進化が小型化を促進した結果、接合部が過渡的な発熱に反応し、熱的に活性な誤差を生じさせる可能性があると推測しました。この仮説を検証するため、スペクトラルではシミュレートされた音楽波形を用いた高度なサンプリング試験を開発し、有望な新半導体デバイスを選別しました。典型的な評価では、半導体接合部に孤立した過渡現象を発生させ、音楽増幅時の発熱やスピーカー負荷による補正応答を再現しました。こうした現象には瞬間的なエネルギーバーストを必要とする応答が求められ、急激な温度上昇を引き起こします。すると定常状態であるべき接合電圧が変化し、現象の記憶や誤差応答・熱的尾跡の発生を誘発します。ほとんどの集積回路オペアンプ増幅器も同様の課題を抱えるため、この試験手法は民生用デバイスとの協業を通じて実用化されました。性能限界は聴覚の鋭敏さと人間の知覚能力に基づいて定量化されました。これらの新たな試験手法は、究極の解像度と精度を達成するための本質的に高速で低ストレスな増幅というスペクトラルの理念を一貫して実証しています。瞬時波形精度が百万分の1レベルで達成されると、リスニング体験は極めて詳細で透明感があり、没入感のあるものとなります。優れた増幅デバイスを求める探求は、プレミアムテレビやコンピュータディスプレイ向けの最新ディスクリート半導体へと繋がりました。その頑丈な構造と先進的な製造プロセスにより、熱的テールや誤差の記憶化問題のない、堅牢かつ極めて高速なデバイスが実現したのです。これらの新デバイスは広範囲の電圧・電流で動作可能でありながら、優れた利得直線性、高速性、超高周波増幅能力を備えています。DMA-400は、これらの画期的な性能を組み合わせることで、比類のない明瞭さと解像度を実現しています。
DMA-400の開発過程では、数多くの半導体技術と製造プロセスが研究されました。特に有望だったのは、画期的な製造プロセスと計算設計されたチップ形状を採用したもので、従来のトーンテストと当社が新たに開発した音楽関連テスト手法の両方で優れた結果を示しました。この研究から生まれた最良の事例は、しばしば独自の回路や新規回路を生み出しました。それらの設計統合には、テスト用アンプ内の多くの抵抗器やコンデンサを変更する計算による「再設計」が必要でした。各実験では新しいJFET、CMOS、バイポーラ素子が採用されることもありましたが、従来の部品交換とは異なり、テストプラットフォームは高度に進化したスペクトル基準部品と現実的に比較可能な、綿密に設計された最適設計プロトタイプでした。この研究の成果がスペクトラル高速ハイブリッドアンプ(SHHA)ドライバーモジュールであり、SMT技術と従来型リード付き部品技術の両方から入手可能な最高品質のトランジスタを用いた、理想的に最適化されたトポロジーを実現しています。
新型SHHAドライバーモジュールでは、高速化に成功した新デバイスを最大限活用するため表面実装技術が不可欠です。SHHAドライバーモジュールは必要な箇所で部品密度を高め、レイアウトは従来ドライバーよりも目的指向性を強化しています。左右チャンネルが極めて良好に分離され干渉を受けないため、模範的なステージングと静粛な増幅がこの技術の特徴です。固有の小型化により、増幅器の電圧・電流を調整するサポート回路や、信号線・電源線・スピーカーケーブルから伝播する可能性のある磁界のキャンセル、静電的相互作用の遮断に用いるより優れた回路の搭載が可能となりました。スペクトラル社の全アンプは同様の環境遮断戦略を採用していますが、SHHA表面実装ハイブリッド技術による追加の微調整により、この能力が大幅に向上しています。また、密接な熱結合により温度を均一に分散させ、ダイナミックヘッドルームを向上させる高バイアス電流を可能にします。マイクロボルト感度のJFETデバイスから強力なコンパクトMOSFET出力セクションへの重要なゲイン経路は、直接的でクリーンな増幅を実現します。これら全てを統合したSHHAドライバーの新型ハイブリッド表面実装構造と先進アクティブデバイスは、精度・速度・電力性能を向上させ、DMA-400「フォーカスト・アレイ」の高速・大電流出力を支えるために必要な安定性マージンを拡大します。
DMA-400の高性能SHHAドライバを補完するのは、高解像度ディスプレイ用途向けに開発されたカスタム半導体技術を採用した新世代の高度なゲインステージです。これらの新型高速・高電圧デバイスは、モバイル製品向け低電圧トランジスタに注力する業界において極めて稀な存在です。
様々なカスタムパッケージングオプションの実験により、熱的テールエネルギー蓄積を実質的に示さない強力な高速デバイスが実現しました。これらの卓越したデバイスを最大限に活用するため、新たなダブルプッシュプル・完全平衡ゲイントポロジーを採用。この構成では、カスタムゲインデバイスが従来のSpectralゲインセクションのほぼ2倍の速度を実現し、低インピーダンス化とアンプ出力への駆動マッチングを改善しています。新ゲイントポロジーによる理想的な出力段駆動とスルー対称性により、アンプ固有のスルーは650Vus超に増加し、当社史上最高の性能を達成。DMA-400ゲインセクションはSHHAドライバーの進歩を反映し、高速定常化を実現する新デバイスにより、深い動的定常化能力を備えた超高速過渡応答を実現しました。
ライブ信号のオリジナル音楽波形に対する迅速な応答と瞬時の正確性は、精巧に制作された高解像度録音の証です。再生においても同様の要件が不可欠です。過度な補正やフィードバックに依存しない本質的な広帯域幅は、音質に悪影響を及ぼす技術的複雑性を回避できるため、性能の基盤として重要です。過渡相互変調、クロスモジュレーション、グループ遅延歪み、分散、リアクティブ負荷などは、DMA-400では発生しない、説明・理解が困難な誤差の一例です。しかしながら、高速回路全般に共通する課題として、高速性に伴う熱的安定化(サーマルテール)が問題となり得ます。高度なテストと最先端の半導体、多くの専門的なエンジニアリングを要する卓越したレイアウトが、これらの歪み問題に対処し排除するために必要でした。波形または時間的な観点において、DMA-400からの出力信号は、入力信号と全く同じ波形形状で、音楽イベントの点「A」から点「B」までを移動します。これは、入力イベントの前後を問わず、記憶された不自然なアーティファクトを一切含まない、百万分の1単位の精度で実現されます。これには極限の精密さが求められます。スペクトラルの回路は本質的に高速かつ高精度であるため、DMA-400の増幅はストレスフリーかつ精密であり、この重要な性能特性が最高次元の明瞭さ、透明性、解像度を保持します。
スペクトラル増幅器の回路、デバイス、レイアウト、構造は、高度に洗練された性能を生み出すシステムとして連携するよう慎重に設計・構築されています。DMA-400内部のすべてのアセンブリと大半のコンポーネントは、新開発のSHHAドライバーボードと完全バランスゲインセクションの利点を最大限に引き出すため改良されました。これらの改良は、スペクトラルの妥協なき設計哲学を実現するために不可欠です。
革新的な新SHHAドライバーセクションに加え、DMA-400は新設計の電源回路とトランスを採用。大型化されたトランスは当社史上最高レベルの厳密な電圧安定性と絶縁性能を実現し、過酷な低インピーダンス負荷への給電能力を備えています。驚くべきことに、この高性能レベルが比較的コンパクトなサイズと適度な重量のアンプで達成されています。
DMA-400の新世代アンプシステム基板は、信号経路にフェライト安定化素子やコンデンサを必要としない超高安定高周波動作を実現する先進的なRFレイアウト技術を採用。新開発の「ハイプレート」基板技術により、従来比3倍の配線幅を確保し、電流容量と配線密度を飛躍的に向上させています。
新設計の信号ケーブルと精密接地システムは、新型SHHAドライバーとバランスゲインセクションの極めて高いアイソレーション特性を最大限に活用するよう設計されています。オーディオ経路は可能な限り直線的かつ短く、最小限のフィルタリングにより、最低ノイズレベルと極限の静粛性、信号分解能、過渡応答安定性を実現しています。
DMA-400においてスペクトラルはSHHAドライバ技術をさらに発展させ、従来ドライバの2倍の速度と信号応答性を備えた画期的なアンプトポロジーを実現しました。この速度域では、デバイス内のエネルギーの蓄積や熱的記憶が顕著な信号歪みとして観測され、過渡応答の詳細をぼかし、楽器の減衰や相互作用をにじませます。DMA-400では、高度な新試験手法により、こうした高速移動する熱的残留アーティファクトを特定し、先進的な新SHHAドライバトポロジーで、それらを除去します。革新的なプッシュプル・バランスゲイン回路と組み合わせることで、新SHHAドライバーは百万分の1単位の波形精度と、オーディオアンプ史上最低レベルの歪みを実現しました。信号の記憶をほぼ完全に排除した「瞬時の精度」という長年の理想が、スペクトラルオーディオ史上最も先進的なアンプであるDMA-400モノラルリファレンスアンプにおいて、大いに実現されたのです。
原文:Design Overview - The DMC-30SS Series 2 Reference Preamplifier System
Spectralが2007年にDMC-30SS Series 1を発表した時、我々は既に、DMC-30シリーズの第三世代にあたるこのプリアンプが特別な存在であることを確信していました。第一世代のDMC-30は、Spectralの販売店および世界中の顧客システムにおいて驚異的な成功を収めました。音楽愛好家にとってより重要なのは、DMC-30というプラットフォームが性能面で驚異的な成果を生み出し続けてきた点でしょう。10年以上にわたる絶え間ない技術開発と最先端の音響的達成がそれを物語っています。DMC-30は、堅牢で過剰設計された基本コンポーネントトポロジーと、最先端技術の発展に合わせて容易に進化可能なオープンなモジュラーアーキテクチャを開発する価値を証明しました。不朽の名機DMC-30シリーズは常に革新を続け、加速するオーディオ市場において年々最先端を走り続けながら陳腐化を拒み、新世代ごとに性能を塗り替えてきました。DMC-30SS Series 2に至りSpectral社のエンジニアは、画期的な新設計の高レベルラインセクショントポロジーと改良されたSHHA高速増幅モジュールにより、ベンチマークとなるDMC-30SS Series 1をさらに進化させ、新たな次元の音響的洗練性、精緻さ、リアリズムを実現しました。
DMC-30SS Series 1においてSpectralのエンジニアは、画期的な新技術・レイアウト・部品採用によりプリアンプを再定義しました。第一段階では、先進的な新信号バスを備えた一から設計したシステムボードを採用。第二段階では、SDR-4000 Proの超静粛電源レギュレーター向けに開発された新「フローティング電源システム」を導入。第三段階では、スペクトラル独自の驚異的な「スーパーフェーダー」超高精度スタジオ用ゲインコントロールを追加。これはオーディオ用途向けに開発された最高峰のポテンショメータと言えるでしょう。これらの主要な進歩が相まって、当社史上最も静粛で、解像度が高く、音楽的にリアルなプリアンプが誕生しました。発売以来、DMC-30SS Series 1は過去10年間で最も高い評価を得て成功を収めたコンポーネントの一つであり、ハイエンド業界全体でリファレンスとして用いられてきました。この卓越したDMC-30SS Series 1に、まだどのような進化の可能性が残されているのでしょうか?
DMC-30SS Series 1で導入されたプリアンプ基盤の改良は、高レベル出力セクションのさらなる進化に向けた強固な土台を提供します。DMC-30SS Series 2では、DMC-30SL向けに開発された従来の"301"バランスライン出力セクションに代わり、完全新規設計の"301A"出力セクションを採用しました。
新たなプリアンプラインセクションでは、基本に立ち返り、白紙設計と純粋主義の意図で臨みました。主な設計目標は、特異なSHHAアンプモジュール向けに、直線性と速度を向上させた広いゲインの"スイートスポット"を実現することでした。新たなラインセクションレイアウトとゲイン構造により、これらの目標は"301A"バランス出力モジュールで成功裏に達成されました。
DMC-30が10年以上前に登場して以来、オーディオ愛好家のニーズは進化しました。オリジナルのDMC-30は、フォノフロントエンドと高レベルデジタルソースの両方に対応するゲイン構造を必要としていました。現在では大半のユーザーが専用のフォノコンポーネントを利用しているため、DMC-30SSはデジタルソースコンポーネント向けに最適化され、より厳密な調整による性能向上が図られています。
新型の"301A"ラインセクションは、追加フォノセクション用の切替式ゲイン減衰機能なしで高ゲイン使用に最適化されました。新レイアウトでは信号経路長を大幅に短縮・集約化。初めて4つの増幅セクション全てが完全に対称かつ同一構成となりました。理想的なレイアウトにより回路から安定化コンデンサを全廃し、帯域幅を拡大。高密度な新レイアウトは、強力な高周波抑制、磁界感度の低減、エネルギー蓄積の最小化を実現し、過渡応答の安定性を向上させます。
"301A"ラインセクションは新たに最適化されたSHHAアンプモジュールを搭載。ラインセクションの信号経路と対称性の改善により、SHHAモジュールは大幅に高速かつ高ゲインで動作可能となりました。改良型SHHAモジュールは1.75MHzでフルパワー帯域幅を達成し、従来比ほぼ2倍の性能を実現しています。"301A"ラインセクションのゲインは前モデル比10dB向上し、デジタルソース機器との相性をさらに高めています。
"301A"ラインセクションの最終性能調整には、基板レイアウトの6世代にわたる開発と、各段階での厳格な試験測定、徹底的な試聴セッションを要しました。究極の透明性を実現するため、重要なゲイン設定・フィードバック・補償位置には現存する最高級のカスタムフィルム部品を採用しています。当社がこれまでに開発した中で最も妥協のないラインレベルアンプを創り上げるにあたり、偶然に任せた部分はほとんどありません。
Spectral社のプリアンプのラインセクションは、1970年代の創業以来、エンジニアリングの焦点であり、伝播速度と信号分解能において常にオーディオ業界をリードしてきました。今日、DMC-30SS Series 1で達成された超高速信号応答と信号消去を実現するプリアンプは他に存在しません。そしてDMC-30SS Series 2は、改良された高ゲインSHHAアンプモジュールを搭載したハイスピードな"301A"バランス出力セクションにより、この優位性をさらに高めています。
音楽愛好家の皆様が、音楽システムの性能はプリアンプの性能を超えることはできないと理解されるようになってきていることを嬉しく思います。絶対的な性能と価格に対する見識も深まりつつあります。Spectralの数倍もの価格帯で超高価なプリアンプが次々と登場する今、思慮深い音楽愛好家は、この高値がもたらす真の価値とは何かと疑問を抱かざるを得ません。洗練された愛好家は、妥協を許さないDMC-30SS Series 2にその答えを見出すでしょう。DMC-30SS Series 2の設計者の実績と比類なき部品品質を誇れるプリアンプは、価格を問わずほとんど存在しません。DMC-30SS Series 2には、最先端の部品技術と高度なレイアウト戦略が、超高価格帯のコンポーネントでさえ稀に見るレベルで採用されています。これはSpectral社のエンジニアが、機器の安定性と音響的透明性を最も決定づける重要部品を特定し、積極的に投資した結果です。高価な金属加工の造形美よりも、優れた品質の信号経路部品への慎重な投資を設計の優先事項とすることで、最先端の信号分解能をはるかに手頃な価格で実現できるのです。
DMC-30SS Series 2 Reference Preamplifieを、業界で最も高価で野心的なハイエンドプリアンプと比較してみてください。優れたエンジニアリング経験と設計革新が生み出す音楽的な違いを、きっとご体感いただけるでしょう。