Oracle MA-X2は、アメリカのMIT Cablesが製造していたインターコネクトケーブル。フラッグシップモデルのOracle MA-X SHDと同様に、Oracle MA-X2も、圧倒的な基本性能を下敷きにしつつ、ユーザーがアーティキュレーション・レスポンスを調節できるようセレクターを内蔵している。
Oracle MA-X SHDほど高性能・柔軟ではないが、やはりその音質には目を見張るものがある。音作りにしても一概にOracle MA-X SHDの下位互換に甘んじるものではなく、Oracle MA-X2ならではの強みもある。たとえば、躍動的な低音がそれである。
紐がついた箱である。箱はかなりガッチリとしていて、衝撃等から内部の回路を保護している。その箱に、アーティキュレーションコントローラーという、音を調節するための装置が埋め込まれている。目に見えるのは、ユーザーが操作するためのスイッチだが、これも箱と同様にかなり堅牢な質感である。
取り回しは、システムによっては工夫が求められる。線体が箱を貫通していて、しかもOutに近い位置に箱がついているため、Out側の機器は平置きか、ラック内でも定位置に配置することが望ましい。具体的には、プリアンプの場合、ラックの2段目あたりに設置するのが望ましいだろう。パワーアンプを高所に設置するケースは稀だろうから、DAC・プリ間での接続において、より問題となる話だと思う。
前提として、MITのラインケーブルの性能指標についてはこちらに記載している。Oracle MA-X SHDと同様に、このOracle MA-X2も、開発時の指標からして、帯域バランスと音のスピード&リズムについては、ハイスペックを確約されたケーブルと言えるだろう。
Oracle MA-X SHDに似通った音作りのケーブルであるため、そちらのレビューも参考にしていただきつつ、ここでは相違点を述べてみる。Oracle MA-X2とOracle MA-X SHDとの相違点は:
Oracle MA-X SHDの方がS/Nが良く、ダイナミックレンジが広い。
Oracle MA-X SHDの方が、サウンドステージが広い。
Oracle MA-X2の方が、よりワイルドで躍動的な音作りをしている。
総じて、Oracle MA-X SHDの方がスケールが大きく、大人びた音作りとなっていて、フラッグシップモデルの貫禄を見せつけるものである。
それぞれの評価項目の定義についてはこちらを参照。
Oracle MA-X2は、セレクタースイッチを用いたアーティキュレーション・レスポンスのコントロールが可能である。前提としてMITは、可聴範囲(20Hz〜20kHz)全体にわたるフラットな周波数特性を理想としていて、その度合いを「アーティキュレーション・レスポンス」という語を用いて定義している(詳細な定義はこちらに記載)。加えて、MITはこのアーティキュレーション・レスポンスが良ければ、無条件で「リスナーが理想とする音」が出るとは考えておらず、リスナーが意図的にアーティキュレーション・レスポンスを抑える仕組み(A.A.R.M.™, The Adjustable Articulation Response Module)を提供している。MITの公式によれば、
"It is purely subjective when deciding where the selector switch should be set—experiment a bit and set the selector switch where you feel your system performance is best, and enjoy the music!"
(和訳)セレクタースイッチの位置決めは、完全に主観的な判断になります。試行錯誤して、システムのパフォーマンスが最も良いと感じる位置にセレクタースイッチを設定し、音楽を楽しんでください!
以下では、Oracle MA-X SHDで選択可能は5パターンのセッティングのうち、代表的な3つの設定について、音の所感を述べてみる。
アーティキュレーション・レスポンスを最大化するセッティング。聴感上、音の躍動感や力感も最大化される。これは、低音において特に顕著だが、中〜高音の張りや艶感も増してくる。
最もバランスの取れたセッティング。Articluation: +2との比較においては紳士的な音であり、Oracle MA-X SHDの音を想起させる。
イージーリスニング向け。
MIT Oracle MA-X SHD
MIT Oracle MA-X
MIT Oracle MA
Transparent Opus
STEALTH Indra
Stage III Concepts Gryphon
他